インバウンド(いんばうんど)
インバウンド(inbound)とは、外から中に入ってくるという意味を持つ言葉です。インバウンドの対義語として、中から外に出るという意味のアウトバウンド(outbound)があります。また、インバウンドはインバウンド需要やインバウンド対策など、ほかの単語と組み合わせて使われることが多い言葉です。ビジネスにおけるインバウンドは、ユーザーに自社が提供する商品やサービスを見つけてもらうことを指します。
対して、アウトバウンドとは、商品やサービスを提供する企業が、ユーザーに働きかけることです。インバウンドという言葉は、さまざまなビジネスシーンで使われていますが、使用される状況や業界によって意味合いが異なります。たとえば、観光業においてのインバウンドは、外国人の訪日旅行または訪日外国人観光客を意味します。コールセンター業においてのインバウンドは、ユーザーからの問い合わせに対応する業務のことを指すのが一般的です。また、IT業界におけるインバウンドとは、WebをはじめとするITを通して、外部から行われるすべてのアクションのことを表します。
マーケティングにおけるインバウンドの概念は、相手に必要とされる情報を提供し、役に立つことです。見込み顧客に有益な情報を提供することで関係性を構築し、自社の商品やサービスを顧客へ育成するインバウンドマーケティングという概念があります。インバウンドマーケティングは、ユーザーに対して価値のあるコンテンツを提供し、自発的に自社の商品やサービスに興味・関心を抱いてもらうプル型のマーケティング手法です。インバウンドマーケティングを実践することで、能動的な見込み顧客へ効果的にアプローチできます。
近年インターネット環境やデバイスが普及したことにより、ユーザーは購買に至る前に商品やサービスの情報を自ら集めるようになりました。購買プロセスの変化に伴い、インバウンドマーケティングが注目されるようになり、導入する企業が急速に増加しています。インバウンドは、Attract(惹きつける)とEngage(信頼関係を築く)、Delight(満足してもらう)という3つの方法を通じて実践されます。Attractとは、価値のあるコンテンツや対話を通じて見込み顧客を惹きつけ、アドバイザーとしての存在感をアピールすることです。Attractの段階では、インバウンドマーケティングの土台となるコンテンツの開発や作成を行います。コンテンツを作成する際には、自社の商品やサービスを必要とする人の悩みや課題をリサーチする作業が重要です。見込み顧客に対して価値のあるコンテンツを提供するために、ペルソナ像を具体化し、キーワードやフレーズの絞り込みを行います。同時にSEO対策を行い、作成したコンテンツが検索エンジンで上位表示されると、見込み顧客を獲得できる可能性が高まります。
Engageとは、見込み顧客が抱える課題解決や目標達成に必要な情報を提供して、成約の可能性を高めることです。Engageの段階では、作成したコンテンツで獲得した見込み顧客を顧客へと育成します。自社が見込み顧客に対して、価値のある商品やサービスを提供できることを伝えながら、長期的な信頼関係を築いていきます。一定以上の成果を出すには、営業のトークスクリプトのようなマニュアルを整備し周知することが大切です。Delightとは、購入した製品やサービスを使い、ユーザーが課題解決や目標を達成できるように必要な支援を行うことです。Delightの段階では、顧客となった相手が商品やサービスを快適に利用できるように、アドバイザーや専門家が担当となりサポートを行います。適切なタイミングで支援をすることで、長期的に顧客満足度をキープできます。
インバウンドマーケティングの手法として有効なのは、オウンドメディア、SNS、セミナー、ホワイトペーパーなどです。参考になる情報が詰まった価値のあるコンテンツを作成することで、新しい見込み客を自ずと引き寄せる効果的なマーケティングを展開できます。比較的低コストで行えて、継続的な効果を得られる点がメリットです。興味のあるユーザーに対してアプローチを行うので、好意的な反応を得られれば、自社のファンになってもらえる可能性もあります。一方、効果が出るまでに一定の時間を要することがデメリットとしてあげられます。自然流入を得るまで、コンテンツ作成を地道に続ける必要があり、時間と労力が必要です。インバウンドマーケティングを進める際には、見込み顧客の悩みやニーズを深掘りして、アプローチ方法やタイミングを見極めることが大切なポイントといえます。
実施したインバウンドマーケティング施策の成果を正確に測定するために、事業の達成状況を定量的に測れるKPIという指標を考慮することも重要です。インバウンドマーケティングの主要なKPIは、ウェブサイトトラフィックやコンバージョン率、リピート率などです。KPIを用いて効果測定を行えば、改善点を洗い出せます。分析と改善を繰り返すことにより、インバウンドマーケティングを継続的に最適化し、ビジネスの成果を向上させられます。